AX 2011 MIKUNOPOLIS in Los Angeles
7月2日、アメリカ・ロサンゼルスにあるNOKIAシアターにて、初音ミクのライブが行われました。NOKIAシアターはレディー・ガガやイーグルスなど世界を席巻するアーティストがライブを行った、いわばアメリカ音楽界の聖地ともいえます。
そんなNOKIAシアターで、バーチャルアイドル・初音ミクがライブを行う、こんな夢のような話が現実になるなんて、誰が想像出来たでしょうか?そう、7月2日はアメリカの音楽界に新たな歴史が刻まれた日なのです。
ライブはご存知の通り、5158人(公式発表)が駆けつけ、バーチャルDIVAの鮮烈のデビューに、アメリカは熱狂の渦に酔いしれていました。今回は、ニコニコ動画が生放送を行い、世界中からその様子を見ることが出来ましたが、実際にその場にいた筆者の感想を交えつつ、今回のコンサートの様子を伝えます。
LA、NOKIAシアターのステージに立った、初音ミク!
これまで当ページでもアメリカにおけるボーカロイドの話題について何度も取り上げていました。しかし、当ページが注目していたのは、曲やキャラクターの魅力よりは、アメリカでの広がりやそれを取り巻く環境について、現場から一歩引いた視点からお伝えすることが多かったと思います。それも、当事者であるファンの姿をより詳しく日本に伝えたかったという気持ちがありました。今回もライブが行われると知ったとき、いままで同じスタンスでレポートを行おうと考えていました。
そして、今回の会場であるNOKIAシアターは最大7500人が収容できる大規模なコンサートホール。今回は演出上6000人規模で開催されましたが、それでもまだ大きい会場であることは一目瞭然。正直なところ、ライブが開催されるというニュースが発表された当時は、NOKIAシアターの全席が埋まる様子を想像することができませんでした。事実、これまでAXに参加したゲストがNOKIAシアターでライブを行っても全席埋まることは一度もなく、今回もこれまでよりは少し多い程度かと思うぐらいの気持ちでいました。
これまでいくつかのコンベンションを見て回り、アメリカでの初音ミクの人気の高さは何度も目の当たりにしてきました。それらのコンベンションで行われてきた初音ミクのファンパネルも何個も見てきましたが、800人、小さいものだと39人より少ない場合がほとんど。コスプレイヤーもギャザリングは30〜40人規模。ギャザリングとしては大きい方ですが、可視化しているファンの数は多くとも1000人ほど。「いくら日本で行われたライブが成功していても、海外でのライブは時期尚早ではないか?」という若干の不安を拭いきれませんでした。これは筆者個人の気持ちだけではなく、現地のファンでもそう言った声があるほど、喜びと不安が混じる状況でありました。
しかし、そんな不安もどこ吹く風、4月中旬に販売を開始した初音ミクのコンサートチケットが2週間の間に完売されたというニュースが発表され、驚きと共に、現地から高い期待が集まっている様子が伝わってきました。「そうか、世界は初音ミクをこれだけ愛しているのか」と、自分の想像をはるかに上回る現象であることをAXの始まる前に強く感じさせられました。
AX開催日前日、いわゆる0日目は毎年、参加用のバッジを手に入れるため長蛇の列ができます。しかし今回は、チケットブース以外の場所でも長蛇の列ができていました。そうコンサートチケットの販売ブースです。列に並んでいた参加者に話を聞くと、「事前にミクのチケットが手に入らなかったため、会場で販売される分をどうしても手に入れたかったんだ。」と語っていました。カリフォルニア州だけでなくニューヨークやシカゴ、カナダやメキシコなど北米のファンが駆けつけていました。また、中にはチケットを手に入れるために4時間以上待っているファンの姿もあり、このコンサートが単なるコンサートではない、ひとつの社会現象(Phenomenon)であることが分かりました。AX側もミクのあまりの人気ぶりに急遽2階席を用意し、チケットの追加販売を行うなど誰も予想しなかった事態となっていたのです。
そして迎えた運命の日、7月2日、この日会場には朝からボーカロイドのコスプレをしているファンの姿が多く見られました。そう、ファンは皆、初音ミクが誕生してから、いつの日かアメリカでと待ちわびていた今日の為にと、愛情を最大の形で示しているのです。この日は、コンサートのほかに佐々木渉さん、小林オニキスさんの出演したパネルやコスプレギャザリングなど、ボーカロイドに関連したイベントも多く催され、コンサートへ向けて準備も万端といったところでしょうか。
時刻は夕方6時半、開場まであと少しといったところ。会場のNOKIAシアターにはコンサートの為の参加者が列を成し始めていました。この時点では、普段のコンサートの様子とほとんど変わりはないように見えましたが、それから数十分もしない間にNOKIAシアター前には今まで見たことの無いような人数が集まりはじめました。その中には、もちろんミクのコスプレをしているファンの姿も。憧れの人と同じ衣装、コスプレでライブに参加する。自分とパフォーマーが一体となる。こんな素敵なことは日本のライブではまず見れない光景ではないでしょう。ここがアメリカであり、自分がこの地に居れることがとても幸せだと思います。
NOKIAシアターの前は入場待つファンの姿で埋め尽くされた。
そして、7時20分を回ったところでようやく開場。しかし、この人数はAX史上初の出来事。もちろん多くのビッグネームがコンサートを行っているNOKIAシアターでも、開始前からこれほど並ぶのは、ほとんどないのではないかと思います。しかも、男女年齢人種は様々。やはり10代女の子が多かった印象がありましたが、それはもちろん、ミクがみんなの憧れ、そう、本当の意味でアイドルであるから。しかもここはロサンゼルス。圧倒的な影響力を持つショービズの地であり、アメリカのエンターテイメント産業の中心地。そこで、日本のしかもバーチャルアイドルがこれだけのファンを集める。ここで筆者は改めて、初音ミクは、レディー・ガガと並ぶほどの影響力を持つスターであることを確信しました。
8時過ぎ、ようやく会場内に入るとそこは目を疑うような光景が。今回は、使用するスクリーンの性質上、1階席両サイドをクローズしてましたが、それでも5000人以上の席が埋まっているではないですか。しかも、皆サイリウムを持ち、中にはコンサートを盛り上げるため、サイリウムを自ら配るファンの姿もありました。
入場者の多さに、開演時間も20分ほど遅れての開始となりましたが、ステージにダニー・チューさんが登場し、「これから開演を行うため、皆で一つのキーワードを言いましょう、ミクさんマジ天使!」というMCを行い会場から大きな声援があがり、ミクの人気曲であり、北米TOYOTAのCMタイアップ曲でもある「ワールドイズマイン」と共に、ミクがスクリーンに登場、その瞬間会場の観客が総立ち。サイリウムを片手に「ミクー!ミクー!」という大きな声援が送られました。そして、MCで入った、ミクの挨拶に皆魅了されていました。
ライブ開始から観客は総立ち、サイリウムを振り、全力で応援!
今回のコンサートで特筆すべき曲は、やはり6曲目の「ぽっぴっぽー」、8曲目の「裏表ラバーズ」、13曲目「初音ミクの消失」、鏡音リン・レンの曲、「右肩の蝶」、「炉心融解」巡音ルカの「Just Be Friend」と「ワールズエンド・ダンスホール」。これらの曲はニコニコを見ている人なら聞いたことがない人が居ないのではないのかというぐらい有名な曲ですよね。
その人気はアメリカでも変わりません。アメリカにおけるミク人気は、ニコニコ動画で盛り上がり、それがYouTubeで紹介されるという流れになっています。その中でも、これらの曲は、歌詞は分からなくても曲のノリやキャラクターの好みでアメリカでも大変な人気を博しています。その今までネット上でしかお目にかかれなかったミクやリン、レン、そしてルカがみんなの前に立っているのですから、これがどれだけ大変な出来事かよく分かると思います。観客は曲やキャラクターの動きに合わせ、サイリウムを振り、一緒に踊り、一緒に歌い、会場はまさに一体となった、ボカロワールドがありました。アメリカでも特に人気の高い、鏡音リン・レンがステージに登場したときの会場の女の子の黄色い声援。以前からアメリカでのボーカロイド人気の高さを知っていても、やはり驚きます。
鏡音リン・レンの登場にアメリカのファンは熱狂!その人気はミクを超えるほど!?
衣装チェンジやキャラクターチェンジなどを一瞬でこなすミクたち。ほぼノンストップで続けられたコンサートはその勢いが衰えることなく、21曲目「SPiCa」が終わると、ステージ上のバンドメンバーが退場。しかし、会場の観客は誰一人席を離れようとしません。むしろ、「ミクー!ミクー!」というコールがNOKIAシアターに響き渡ります。そして、ステージのライトが再度アップされると、コンサート開始時と同じぐらいの歓声が沸き起こり、アンコール曲を3曲熱唱。ファンも全力でミクを応援し、革新的で感動的なコンサートは幕を閉じました。
これは筆者の個人的な意見ですが、アンコールの最後に歌われた「ハジメテノオト」で涙を流さなかった人はいないでしょう。受け取り方はそれぞれですが、この歌には、これまで発表された歌はYAMAHAやクリプトン、ボカロPさんや各クリエイターさん、そしてファンに対する初音ミクからの感謝を込めたアンサーソングではないでしょうか?彼女は彼らの存在なくしては歌うことはできません。歌詞にある「ワタシは言葉って いえない だから こうしてうたっています」という言葉の中にすべてが含まれているように思えます。それをこのライブの最後に持ってくるこの演出には涙が出るのを禁じえません。
衣装チェンジも一瞬!これが次世代のコンサート!
今回の透過式ボードで映し出されたミクのリアルさ、ダンスの滑らかさ、衣装の可愛さ、虜にならない人は居ないのではないのでしょうか?そしてバックサウンドを務めた「The 39's」の音色、観客の声援とサイリウムが織り成す幻想的な世界。惜しむべきはスクリーンの映像が場所によっては見えづらかったことでしょうか?コンサート終了後、観客からもそういった声が上がっていましたが、それでも皆十分満足。筆者も初めてのボーカロイドコンサートでしたが、価値観が全て変わってしまう圧倒的な世界に魅せられ、目頭が熱くなってしまいました。
ミク、The 39's、そして観客が一体となった、幻想的な世界がたしかにここにあった!
そして、ミクの「I'm looking forward to see you again」という言葉は決してロサンゼルスだけはなく、アメリカ、そして世界中のファンの心に届いたと思います。次はどこでどんなサプライズが待っているのかは誰にも分かりません。しかし、ひとつだけ言えることがあります。そう、「初音ミクは世界共通語」。曲やキャラクターが国境を越え、そして、ありのままの姿で人を魅了する。この説明がつかない、でも、楽しい初音ミク現象(Hatsune Miku Phenomenon)に今後もますます目が離せません!
ディラッドボードに映し出されたバーチャル歌姫・初音ミク!(www.flickr .com )
セットリスト
1.Project Diva desu.
2.ワールドイズマイン
3.えれくとりっくえんじぇぅ
4.恋スルVOC@LOID
5.クローバークラブ
6.ぽっぴっぽー
7.ロミオとシンデレラ
8.裏表ラバーズ
9.パズル
10.VOiCE
11.1/6
12.moon
13.初音ミクの消失
14.右肩の蝶 (鏡音リン・レン)
15.炉心融解(鏡音リン)
16.Just Be Friend(巡音ルカ)
17.ワールズエンド・ダンスホール(巡音ルカ・初音ミク)
18.from Y to Y
19.サイハテ
20.ファインダー DSLR remix-re:edit
21.SPiCa
アンコール
22.愛言葉
23.StargazeR
24.ハジメテノオト
文・写真 ヨシ沢
関連リンク
ロサンゼルスの「初音ミク」コンサート
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